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例えば打率3割と言われたら、 野球ではかなり上手な部類に入るのだろうか。 合格率30%と言われたら、それは狭き門なのだろうか。 100人中、30名様に素敵なプレゼントが当たりますと言われたら、 期待して待ちわびるものなのだろうか。 2年前の人間ドックで要精密検査を指示されていたにもかかわらず、 忙しさにかまけて放置していた姉が、 病院からreminderが来て、急遽、一週間後に円錐切除手術を受けることになり、 手術同意書に親の承諾サインが必要になった。 手術は治療が目的ではなく、 摘除した組織片を精査し確定診断を得るためのもの、 だから結果がわかるのは一ヵ月後、 悪性の可能性は30%、 悪性だったら全摘、 医者から受けた説明に加えて、 ネットで収集した病気に関する情報のプリントアウトを片手に、 "想定しうる可能性"を極めて冷静に両親に説明する姉と、 その"想定しうる可能性"や処置について、 ひとつひとつ質問を姉に投げかける父と、 どうしよう…お姉ちゃんに何かあったら、どうしよう、 オロオロして動揺を隠せない母と、 3月のある週末、実家に帰ったらそんな状況になっていた。 今、一番気弱になっていいはずの姉は、 まるで上司に仕事の報告をするかのように淡々としており、 母を慰め、励まし、安心させようとしている。 父は父で、努めて冷静に受けとめようとしていて、 部下の報告を受けながら財務諸表でも読んでいるかのように、 プリントアウトをじっくり見ながら姉の説明を聞いていた。 ふうん、病院って検査忘れてもちゃんとremindしてくれるんだ…、 でも、ひとりぼっちになったら、私の手術の同意書には誰がサインしてくれるんだろう、 突然のことで事情がよく飲み込めず、 ひとり蚊帳の外におかれた私はそんな間抜けなコトを考えていて、 でも何も言葉を発せられなかったのは、 不安や疑問を感情のおもむくまま言葉にすれば、 きっと誰かが傷つき、或いは自分も傷つくと思ったから。 言葉にしたら、その通りになってしまいそうで怖かったから。 我が家は、 いつでも冷静沈着で気丈に振る舞える父と姉、 朗らかで社交的だけど、何かあるとすぐにヨワヨワになる母と私、 で構成されている。 姉とは幼稚園から中学まで一緒だったけれど、 私は学校でも有名な"泣き虫 杏ちゃん"だった。 算数セットを床に落としてビービー泣き、 体操着を忘れてはビービー泣き、 粘土がうまく捏ねられなくてビービー泣き、 給食を食べるのが遅くてはビービー泣き、 その度に、高学年の教室から姉がすっ飛んできてくれて、 そして鳴いたカラスはすぐ笑ったものだった。 お姉ちゃんに何かあったらどうしよう、 心細くて不安で、本当は今だってビービー泣きたいのだけれど、 違う、それは違う。 今度は私がしっかりする番、 父と母の前で滅多に弱音を吐かない姉が、 いつでも力を抜ける場所を作っておかなければいけない。 入院数日前、姉を北欧料理の店に誘った。 激励会してあげる、パーッといこうよ。 何しろ自覚症状は何もない姉だから、 その日も元気に残業、 私は30分近く待たされたのだが、 ようやく店に入ってきた姉は、 やっぱり北欧ならアクアヴィットよね、 と、キンキンに冷やしたやつをグビっとやった。 杏、ママをよろしくね。 ふと漏らした、けれどもかみ締めるように呟いた姉のその一言が、胸に響く。 うん、わかった。大丈夫。 お姉ちゃん、今は自分の身体のコトだけ考えて。 お互いそれ以上言葉にはしないが、 親の想い、特に二人の娘を産んだ母の胸中によぎる不安や同性ならではの心情を、 姉も私も確かに感じ取り、思いやっていたのだと思う。 取り乱すわけでもなく、感情的になるわけでもない。 ただ、産まない、が、産めない、になるかもしれないということ、 女なら誰だってその可能性に怯え、 それが現実になれば深く傷つき、悲しむ。 パパが代わってやりたいよ…。 入院中の姉を見舞った帰り、父が母にそうこぼしたと言う。 "杏が穏やかに健やかに暮らして、 ご両親に「ありがとう」と労わりの気持ちを持てればそれが親孝行なんだよ" かつて友人に言われた言葉を、 正直、他人事のように思っていたその言葉を、 今、何度も何度も思い出す。 まもなく検査結果が出る。 姉は当日、ひとりで聞きに行く。 30%の可能性を高いと思うのか、 70%の可能性で問題がないのなら大丈夫、と受けとめるのか、 姉はどっちのタイプなんだろう。 姉妹なのに、実はわかっていないのだなと思う。
by apricot0113
| 2009-04-07 03:45
| これから
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