会社のパーティーの幹事役を仰せつかった。
なにぶん歓送迎会シーズンで予約が取りにくい季節、
早速、候補のスペイン料理の店で下見を兼ねて食事することにし、
姉に付き合ってもらうことにした。
急な誘いだったこともあり、仕事の都合で姉は40分ほど遅れるとのこと、
私はスパークリングワインと鯛のカルパッチョで先に始め、
飲みながら店の人と打ち合わせをしていた。
そろそろ次の前菜をオーダーしようかと思ったところに、
姉が春色のスーツで現れた。珍しくビシッと決めている。
遅くなってごめん。今日、表彰式だったんだよね。
そして装丁された立派な表彰状を見せてくれた。
功労賞みたいなものらしいのだが、大人になってからの表彰状は何か新鮮だ。
彼女を誇らしく思い、いい気分になってタパスを次々と注文した。
二杯目のスパークリングワインと姉の"とりあえずビール"も。
大学卒業後、私は途中6年弱の専業主婦期間を経て、今、3社目に勤務中。
一方彼女は、1社一筋30年。
もちろんそこで異動も転勤も経験し、
様々な役職を歴任し、職責を果たしてきた。
でも二人とも、社会人になった当初は、
"数年したらお嫁さんになって、お母さんになっている"
と当たり前のように思い込んでいた。
お嫁さん→お母さんコースが夢だったというわけではないが、
ただ他の選択肢があるとは思ってもいなかったし、
全く考えようともしなかったのだ。
こんなはずじゃなかったんだけどね…。
同期入社の友達はそろそろ子どもを育て上げる頃、
それ見ると自分は何かやり残しているなあって思っちゃうんだよね。
姉は苦笑しながらぼそっと言った。
炎上した大阪の校長の発言を意識しているかどうかはわからない。
姉がそう感じていることに少し驚き、悲しくもあったから、
そこは深く追究したくなかった。
自身の生き方を否定したり後悔したりする姉を、
私は認めたくないんだなと思う。
認めたら、私自身の生き方をも否定することになるだろうから。
人は年を重ねて初めて気づくことがある、
振り返って過去の選択や決断を悔いることもあり、
そこからやり直せることとやり直せないことがあって、
やり直したくても間に合わないこともあるということを、
若い時分からちゃんとわかった上で生きている人なんているんだろうか。